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「おー、福田君。こっちこっち。」
喫茶店に入るなり、タケシが一番奥の席から大きな声で俺を呼んだ。
「お前普段、俺を君付けなんかで呼ばんだろ。アナゴさんか。」
俺はそそくさとタケシの前の席に座った。
タケシの大声で集まった視線を振り払おうとするその行動は、タケシに借りた金を返しに来たように見えただろうか。屈辱だ。
「で、相談って?」
お冷を持って来た店員にアイスコーヒーを頼んだ後、挨拶もそこそこに、俺はタケシに尋ねた。
「いや、俺って未だ無職ジャン。」
カジュアルに無職って伝えてくるなぁ。
「そうだな。タケシは俺の2個下だから、48歳か。無職歴何年?」
「5年。」
やばいな。下手したらオリンピックを2回開催しているな。
タケシは熱そうにコーヒーをすすった。無職歴を告白した直後の、そのクチで飲むコーヒーは一体どんな味だい?
「でさ、5年ともなると、『コレ』がなくなるんやよ。」
タケシはこの世で一番醜いウインクをしながら、右手で作ったOKマークをひっくり返し、軽く上下に揺らした。
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