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ふと、タケシに壊された塀からタケシんちの庭を覗く人影があるのに気づいた。
タケシんちの庭を神社だと勘違いしている人なんだろう。
違いますよ、と言ってやろうかとも思ったが、それをするのは本物の神様の役目か、と思いなおした。そして、いい加減この庭から退散しようと立ち上がった。
その人からすると、さっきの格闘でズタボロになった姿で、賽銭箱の横に座り込んでいる得体の知れない俺だ。
その俺が歩き始めたのを見て、その人も今がチャンスと思ったのか俺を避けるように遠回りして絵馬置き場へ歩きはじめた。
そうやって歩いていくと、そこは言っても個人宅の庭だ。
いくら避けようとしても、俺とその人は声の届きそうな距離まで近づく瞬間があった。
その時、何故だかわからないが、俺はその人に向かってこう呟いていた。
「ようこそお参りを。」
ーおわりー
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