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27.伊吹
とうとうクリスマスのお誘いが!
それも名波先生の手料理?!
そしてそしてお泊まり!!!
それってやっぱり、「俺、ネコだから」の伏線回収ってことでいいんですよね?!
この間のようなことがあってはならない!
俺がイニシアティブを取りたい!
そういえばさっき、夜なら、って俺が言った時名波先生ちょっと間があったような。
昼からお邪魔したい気持ちはヤマヤマですが、そこには事情がありまして。
それは!
クリスマスプレゼントの調達!
もっと早くから準備するべきなんじゃないか、という意見はごもっともです。
が、俺一人では何を選べばいいのかさっぱりなので、ある人に助けを求めたところ、なんとイヴ当日の昼しか空いていなかった……
その相手はというと。
姉!
里村那月。33歳、独身。
同じ母親から産まれてきたとは思えない俺と姉は、生き方考え方が真逆。
姉は華やかで社交的、学生時代から恋人が切れることもなく、友達も多い。クリスマスプレゼント選びなど朝飯前だ。
俺は教職に就くため勉強ばかり、一応彼女はいたもののそれは高校生の頃の話で、大学に入ってすぐ出来たふたりめの彼女とは俺といても面白くないという理由で1週間でダメになりましたとさ……
というわけで。助けてくれる姉は高級ブランドの直営店勤務。いわゆるフロアマネージャーらしい。
クリスマスなんて大忙しなのだが、時間を作ってくださるということで…
まずは姉の職場の近くで打ち合わせ。
「で?どんな子なの?」
「えっと……年上……」
「おっ♪いいねえ、美人?可愛い系?」
「び……美形かな…」
「へえ、いっくん、面食いだったっけ?写真は?」
「写真は…ちょっと…」
「なんで!顔見ないと選べないよ!アパレル歴10年のあたしの目は確かよ?絶妙に似合う色とか見つけてあげるってのに」
「………そ…そうだよね…」
「どしたん?何ビビってんの、だーいじょーぶ、趣味悪いとか言わないからさ、見せてみ?」
「こ……この人なんだけど…」
「どれどれ、ほー……………いい男じゃん🖤」
「なっちゃん……驚かないの?」
「別に?しかしよくあんたみたいなゴツくてクソ真面目な子に、こんないい男がなびいたもんだね……いっくんにしてはよく頑張ったねぇ、褒めてあげる」
「な………なっちゃぁぁぁん…っ」
「ばか、こんなとこで泣くな、恥ずかしい!」
「ず…ずびばぜん……うぅ…っ」
姉の那月は、小さい頃から俺の憧れだった。
いつでも全身全霊で俺を守ってくれる存在で、両親にも言えないことも、彼女だけには打ち明けられた。
なっちゃんが結婚したら……俺泣いちゃうよ……
はっ。感傷的になっている場合じゃない。
俺は姉に、名波先生の雰囲気やファッションを伝えた。
腕組みをしてうなづいていた姉は、なるほど、と大真面目な顔で言った。
「何事もスマートで紳士的、ファッションセンスも良くて多分お金持ち、かつイケメンでスタイル抜群と」
「はい…」
「そして男女問わずモテる。……いっくん、そういう人には、中途半端なものあげちゃダメよ」
「ど……どうすればいい?」
「いっくんじゃなきゃあげられないもの。他の誰かに何をもらっても霞んじゃうような、スペシャルなプレゼントを用意するっきゃないでしょ」
「スペシャル?」
「ふふふ…お姉様に任せなさい!」
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