26.眞比呂

1/1
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

26.眞比呂

路地裏で果てたふらふらの里村(さとむら)をそれ以上襲うわけにもいかず、結局またタクシーで送り届けたわけだけど… これじゃ逆じゃなーい? 俺が襲ってどうするよ。 俺は襲われたいの(笑)! しっかりしてくれ、若者。こうなったらおじさん頑張ってエッチなパンツ履こうかな(違う)。 要するに向こうがそういう気分になりやすくて、堂々とそういうことができる場所に誘えばいいわけだ。 簡単♪ ラブホじゃん? いや待て、もうすぐクリスマスだよ。 エグゼクティブでゴージャスでラグジュアリーなホテルでも取れば、否が応でもそういうことになりやすい! どうしてこんな簡単なことを思いつかなかったかなぁ、俺ってば。 と、携帯でいろいろ探してみるものの、来週にクリスマスを控えてどこも満室。 今年はおうちクリスマスが主流じゃないのか? が、予約が取れないんじゃどうしようもない。 こうなれば奥の手だ。 トゥルルル…トゥ……プツ。 「もしもし、名波(ななみ)です」 「…ぉ……ぉつかれさまです……」 え、まだそんな感じ(笑)?そろそろ立ち直ってよ。 「今日はごめん、大丈夫?……えっと、来週の予定なんだけど」 「は、はい、来週ですか」 「日曜日、空いてる?」 空いてませんって言ったらぶっ飛ばすけどね。 「日曜日って……クリスマス、ですよね」 「そうだね。イヴだね」 「夜は……空いてます」 …夜は? 昼はどうした? 「……じゃあ夜、食事でもどう?」 「よっ、よっ、喜んで!」 「ついでに、月曜日の着替えも持って来て」 「……えっ……」 「泊まりね。まあ、クリスマスだからってたいした料理は作れないけど」 「……っあの……それって…」 「うん。俺の家」 「○□◇※🖤◎△※っっ!!!」 何を言ってるかわかりません(笑) ずびっ、ずびっ、と、電話の向こうから漏れ聞こえる喜びのむせび泣きが汚い。 「ありがとうございます……感動です、クリスマスに名波先生のお宅にご招待いただけるなんて……」 「そんな仰々しい…あ、そうだ、飲み物買ってきてくれる?シャンパンとか、適当に」 「わかりました!適当に!」 適当、という言葉の使い方それで合ってる?(笑) とりあえず場所はこれでOKと。 あとはプレゼントだなあ… 仕方ない、あいつに聞くか。 俺はもう一度携帯を取り出した。 「あ、もしもーし、俺。今ちょっといい?」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!