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28.眞比呂
「呼び出してごめん、仕事大丈夫?」
「ほんっっっっっとに急だよな、お前は昔っから!こちとら出張中だぞ!」
「だって用事って急に思いつかない?だから急用」
「相変わらず口の減らない……」
「まあまあ、奢るからさ」
「当たり前だ!」
大学1年から3年間付き合った元彼、日下部柊真。親友から入って、酒の席でバリタチとバリネコであることが発覚し、おまけに実は密かにお互いを好きだったことも発覚し、ベタ甘な3年間を過ごした。
就職と共にお互い多忙になり別れたが、未だに仲は良い。
今日も海外勤務から日本に戻ってきているのを、無理矢理呼びつけた。
「それで?眞比呂から連絡寄越すってことは、なんか頼みがあるんだろ」
「さっすが柊真、よくお分かりで」
「誰かいいのいない?ってのは無理だぞ。俺だって今フリーなんだから」
「えっ!」
「……なんだよ」
「だって」
「絶賛片思い中なんだよ」
「ねえそれ、ずっと言ってない?中国赴任前から」
「仕方ねえだろが!諦めきれねえんだから!」
「柊真らしくない…次行けばいいのに」
「それ以上余計なこと言うと帰るぞっ」
「はいはいごめんなさ〜い」
柊真は同じ会社で働く同僚にアプローチしていたが、中国へ転勤になる直前、玉砕したらしい。
それがもう数年前のことだから……ピュアというか、シツコイというか。
「でっ。早く話せよ」
「そうそう、俺今、超〜〜お堅いノンケくんと付き合ってんだけどさ」
「……ノロケか」
「まあ聞いて?ノロケようにも、まだキス止まりなんだよ。もうすぐ2ヶ月になろうというのに」
「またまた〜」
「いやマジで」
「歩く下半身と謳われた名波眞比呂ともあろう者が…」
「その下半身に突っ込んでたのは誰でしょうね」
「それはさておき」
「さておくのかよ」
「そのノンケくんがどしたって?」
「もうすぐクリスマスじゃん?どうにかそこでもう一歩進ませたいんだけどさ……なんか秘策ない?」
「秘策ねぇ……俺ノンケ担当外だからなぁ」
「いやいや、稀代のモテ男日下部柊真なら、なんかあんだろ?」
「そうだなあ…」
稀代のモテ男という褒め言葉が効いた。
柊真はうーん、とかえーと、とか言いながら携帯を見ながら何やら探してくれている。
そして、これは?と言ってある店のホームページを見せてくれた。
「何の店?」
「darling honeyって知らない?最近ゲイ友の中で人気なんだよね」
「へえ……わっ!」
「なに、どした」
「これ……この赤いやつ!」
darling honeyというのは、男性用セクシーランジェリーの店だった。
商品をスクロールしているうちに、見覚えのあるものに出くわした。
「眞比呂、これ持ってんの?」
「ち、違、生徒が…」
「えっ、お前、まさか付き合ってるのって未成年…」
「違うって!付き合ってんのは大人!これは、俺に付き纏うストーカー生徒がくれたんだよ」
「なにそれ怖い…」
「怖いだろ?それにこれ、結構値段すんじゃん…」
「最近ネットでも買えるからな…バイトで金貯めて買ったんだろうな。名波先生のために🖤」
「やめて怖すぎる」
「でもさ、見て見て、結構可愛いの多いんだよ」
「俺こういうの着るタイプじゃないんだけどなぁ」
「タイプじゃないからこそ、サプライズ的で一歩前進するにはうってつけなんじゃないの?」
「なるほど……」
確かに想像しちゃった里村が大変なことになってたな。
冗談を逆手に取るか。
「眞比呂、これ似合いそう。色白いから、映える」
「え……マジで?ちょっとエロすぎない?」
「エロくてなんぼ。クリスマスだよ?」
「ですよねえ…」
「ダーハニの店舗、近くにあるって」
「行く!柊真、付き合って!」
「はいはい」
ということで、親友の協力を得て俺は、クリスマス用のサプライズを仕込むことにした。
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