28.眞比呂

1/1
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

28.眞比呂

「呼び出してごめん、仕事大丈夫?」 「ほんっっっっっとに急だよな、お前は昔っから!こちとら出張中だぞ!」 「だって用事って急に思いつかない?だから急用」 「相変わらず口の減らない……」 「まあまあ、奢るからさ」 「当たり前だ!」 大学1年から3年間付き合った元彼、日下部(くさかべ)柊真(しゅうま)。親友から入って、酒の席でバリタチとバリネコであることが発覚し、おまけに実は密かにお互いを好きだったことも発覚し、ベタ甘な3年間を過ごした。 就職と共にお互い多忙になり別れたが、未だに仲は良い。 今日も海外勤務から日本に戻ってきているのを、無理矢理呼びつけた。 「それで?眞比呂(まひろ)から連絡寄越すってことは、なんか頼みがあるんだろ」 「さっすが柊真、よくお分かりで」 「誰かいいのいない?ってのは無理だぞ。俺だって今フリーなんだから」 「えっ!」 「……なんだよ」 「だって」 「絶賛片思い中なんだよ」 「ねえそれ、ずっと言ってない?中国赴任前から」 「仕方ねえだろが!諦めきれねえんだから!」 「柊真らしくない…次行けばいいのに」 「それ以上余計なこと言うと帰るぞっ」 「はいはいごめんなさ〜い」 柊真は同じ会社で働く同僚にアプローチしていたが、中国へ転勤になる直前、玉砕したらしい。 それがもう数年前のことだから……ピュアというか、シツコイというか。 「でっ。早く話せよ」 「そうそう、俺今、超〜〜お堅いノンケくんと付き合ってんだけどさ」 「……ノロケか」 「まあ聞いて?ノロケようにも、まだキス止まりなんだよ。もうすぐ2ヶ月になろうというのに」 「またまた〜」 「いやマジで」 「歩く下半身と謳われた名波眞比呂ともあろう者が…」 「その下半身に突っ込んでたのは誰でしょうね」 「それはさておき」 「さておくのかよ」 「そのノンケくんがどしたって?」 「もうすぐクリスマスじゃん?どうにかそこでもう一歩進ませたいんだけどさ……なんか秘策ない?」 「秘策ねぇ……俺ノンケ担当外だからなぁ」 「いやいや、稀代のモテ男日下部柊真なら、なんかあんだろ?」 「そうだなあ…」 稀代のモテ男という褒め言葉が効いた。 柊真はうーん、とかえーと、とか言いながら携帯を見ながら何やら探してくれている。 そして、これは?と言ってある店のホームページを見せてくれた。 「何の店?」 「darling honeyって知らない?最近ゲイ友の中で人気なんだよね」 「へえ……わっ!」 「なに、どした」 「これ……この赤いやつ!」 darling honeyというのは、男性用セクシーランジェリーの店だった。 商品をスクロールしているうちに、見覚えのあるものに出くわした。 「眞比呂、これ持ってんの?」 「ち、違、生徒が…」 「えっ、お前、まさか付き合ってるのって未成年…」 「違うって!付き合ってんのは大人!これは、俺に付き纏うストーカー生徒がくれたんだよ」 「なにそれ怖い…」 「怖いだろ?それにこれ、結構値段すんじゃん…」 「最近ネットでも買えるからな…バイトで金貯めて買ったんだろうな。名波先生のために🖤」 「やめて怖すぎる」 「でもさ、見て見て、結構可愛いの多いんだよ」 「俺こういうの着るタイプじゃないんだけどなぁ」 「タイプじゃないからこそ、サプライズ的で一歩前進するにはうってつけなんじゃないの?」 「なるほど……」 確かに想像しちゃった里村(さとむら)が大変なことになってたな。 冗談を逆手に取るか。 「眞比呂、これ似合いそう。色白いから、映える」 「え……マジで?ちょっとエロすぎない?」 「エロくてなんぼ。クリスマスだよ?」 「ですよねえ…」 「ダーハニの店舗、近くにあるって」 「行く!柊真、付き合って!」 「はいはい」 ということで、親友の協力を得て俺は、クリスマス用のサプライズを仕込むことにした。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!