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【 第11話: クリスマスイブ 】
今日は、『2020年12月24日 木曜日』。
世間では、クリスマスイブなんだろう。
あれから、既に9年の年月が経ち、私は、いつの間にか、20歳になっていた……。
この日の朝、私はいつも通り、目覚めるとお兄ちゃんが隣りで寝ていた……。
私はこの9年間、何もしなかった訳じゃない。
この日に、ここから逃げ出すことを夢見てきたんだ……。
それを実行するのに、9年かかっただけ……。
今日こそ、それを『実行』する時だ!
私は、安心して寝ているお兄ちゃんを起こさないように、ゆっくりとベッドを降りた。
そして、パイプベッドをトイレ側に少しずらし、ベッドのマットの縁をしっかりと持つと、それを一気にベッドの壁側へ持ち上げ、押し出した。
「この日をどれだけ待ち望んだかーーっ!!」
『ババッ!!』
「うわっ!!」
お兄ちゃんは、ベッドから落ち、壁側へ転がった。
そして、私が9年かけて掘った穴へ、お兄ちゃんを落とした。
「うわぁーーっ!!」
『ドザッ!! グサッ!!』
「ああぁーーっ!! い、痛い!! な、何をするんだ……。真帆……」
穴の深さは、1mほどだったが、穴の底には、私がここに落ちた時に一緒に落ちてきた木の板で作ったアイスピック状の先端の尖ったものをいくつか埋めておいた。
その1つが、お兄ちゃんの左足を貫通していた。
「真帆、頼む……。助けてくれ! 木が足を貫通してるんだ……。お兄ちゃんは、怪我をしてるんだよ……」
「お兄ちゃんは、私が足を骨折しても、助けてくれなかったじゃない!!」
「何言ってんだ……。ちゃんと治療をしてやったじゃないか……。頼む、立てないんだ……。助けてくれ……」
「私は……、私は、9年間ずっと耐えてきたの!! お前に何か、その気持ち……、分かるはずない!!」
そう、私は、9年もの間、ずっと、ずっと耐えていたんだ……。
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