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【 第9話: 繰り返し 】
「お待たせ。遅くなってごめんよ。今日は、ベーコンと目玉焼き、それに牛乳とヨーグルトを持ってきたよ」
「あ、ありがとう……」
お兄ちゃんは、やさしかった。
昨日の怖い顔のお兄ちゃんの姿は、そこにはなかった。
髪は、少し全体的に伸びたストレートな黒色。笑うと目が見えなくなるほど細くなる。
鼻は少し高めで、鷲鼻。口元に小さなホクロが見える。
「どうしたんだい? 僕のことをじっと見て。 食べないのかい?」
「あっ、食べたい……」
私は、達也お兄ちゃんのことを初めてじっくりと見た。
「足はまだ痛む?」
「う、うん、また痛くなってきた……」
「ご飯食べたら、またこの痛み止めの薬を2錠飲むんだよ」
「う、うん……。ありがとう……」
お兄ちゃんは、何故かやさしかった。
朝食後、お兄ちゃんにもらった痛み止めの薬を2錠飲んだ。
すると、痛みは治まってきたが、また眠くなってしまった……。
次に目が覚めると、またベッドの中に、お兄ちゃんと二人で寝ていた……。
――こんなことが、何回も繰り返された……。
もう、何日経っただろう……。
私は、ランドセルに入っていた、ノートとシャープペンシルで、あることを書き始めた。
お兄ちゃんが食事を持ってきてくれるのは、1日3回。
朝食、昼食、夕食と言って持ってきてくれるので、例え外の日が入らなくても、それで1日が経ったことが分かる。
私は、この閉ざされた部屋に落ちた日から、今、何月何日なのかを、そのノートに記し始めたんだ……。
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