幸せを願って

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秋、深い日…。 さてと!本を持って、ガウンを羽織って… 「鈴ちゃん!何処行くの?」 ヤバっ!見つかった…。 看護師の紗織さんだ…。 「今日は体調いいし、天気もいいし…」 私はひきつり笑いで誤魔化しながらサササっと病室を抜け出した。 私は長い事、療養所にいる。小さい頃から病院を出たり入ったり、そして15才になった今では東京から離れ自然豊かな場所に立つ療養所にいる。 私はこの場所が好きだ。 療養所の前には池があり、その周りには四季を彩る木々がある。春には桜が咲き、梅雨になれば紫陽花が池を縁取り、夏はヒグラシと夕涼み、そして夏の日差しが和らぎ木々の影の輪郭がぼやけて来た頃、紅に染まる圧巻の紅葉。そして何もかもの色を隠す雪景色…。 その景色の中に溶け込む様に点在するベンチ…。 私はそのベンチに座り本を読む時間が一番好きだ。
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