ばち

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そう言うとまかないの丼持って奥に座った。 「ほら、これ使え」 「....?」 そう言い、持ってきたプラスチックの保存容器を手渡す。 「食べきれる量じゃないだろうからって 信がな。俺は一人暮らしだから残り物持っていくようにいくつか常備してるんだよ」 目を丸くすると板さんはにっこり笑う。 「気が利くだろ。店の隅々までよく見てる たがら板長に信頼されてるんだ、あいつは」 「....。」 すごい人だなと素直に思う。 沢山の信頼があって、人の何倍もきっと努力してて... 「だからって惚れるなよ」 「...は?」 「毎年いるんだよ、     アイツにフラれて店辞める子」 「はぁ...」 板さんは溜め息をつきながら、首を振った。 「女の扱いだけはダメなんだなぁ」 「必要ないだけだと思いますけど..」 思わず口に出すと再び襖が開いた。 「まだ食ってんのか」 今度は信也が丼を持って入ってきた。 「洗い物が天井に着くぞ」 慌てて片付け座敷を出た。 大きく息をつく。 気合いを入れて厨房に入ろうと一歩踏み出した時だった。━━━━━━「舞?」 一瞬誰の事か分からなかった。 「舞じゃない!」 呼ばれたからというより、ただ単に声の 大きさに振り向いただけだった。 けれどその女性は奥座敷に入ろうと襖に伸ばしていた手を自分に向け、大きく振った。 誰なのか全く思い出せなかった。 襖から男性が顔を出すまでは 「本当だ、舞がいる。久しぶり舞ちゃん」 男は にっこり 笑うと歩み寄って馴れ馴れしく話しだした。 「元気そうだね、こんな所にいたんだ」 ホストの様な格好の男には見覚えがあった。 「あの後 大変だったんだよ。客には慰謝料 請求されるし、警察は来るし、おかげで店潰れるし」 仙寺の家に暮らす前働いていたCLUBの店長だ。 「そんな怖い顔するなよ、まだオレに殴られたほっぺ痛いの?」 仄は顔を背けた。男は溜め息をつく。 「相変わらず愛想無いなぁ、あんなに可愛がってやったのに。そうだ、あの時オレ腰痛めてさぁ、払ってくれない?慰謝料」 男は酔っているのか 酒臭い顔を近づけ耳元で言った。 「なんなら体で払ってくれていいから」
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