クリスタルクリア

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一往復目。 数回に分けてまずは確実に貴重品扱いのポーチやジッポライターなど一式を“忘れ物”として1Fフロントまで運び出す。そこで不安になってもう一度聞く。 「この23号室って本当に退店したんですかね?まだまだ持ってこなくちゃいけない貴重品ありそうなんですけれども?」 「うん、大丈夫大丈夫。今日は空き部屋多いから、多少時間かけても問題ないですよー」 のほほんとした口調でフロントマンAは俺に返答した。 二往復目。 一回目で気づくべきだった。 室内入ってすぐ左手側が灰皿とテレビリモコンを置くラックがあるのだが、その灰皿の中にあるのは吸い殻ではなく、正方形の透明な包装から破かれた、角砂糖のような白い粉だった。その奥に立て掛けてあったのは100円ライターではなく、ガラス状の香水スプレーのような容器であった。 これはよくギャング映画や刑事ドラマに出てくるドラッグの類であると推測するのは自然だろう。 俺は駆け足でその白い粉を貸し出し用タオルにくるませて、1Fフロントまで駆け下りて行った。窓口からではなく、従業員口から回るようにしてフロントマンBに低い姿勢で 「すいません、ちょっといいですか?もしかしたらヤバい物かもしれないんで、いまチェックしてもらえないでしょうか?」 そう言って隠し持ってきた白い粉をフロント陣に差し出す。するとフロントマンBが咄嗟に 「ちょっと貸して」
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