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『ソリュード王国の専制君主にして、ミスリル魔法王国の元老院最高議長でもある、神々の一柱であらせられる調停神様の御入来』
『ははーーーーっ!』
沐浴を済ませて身を清めた私は、壮麗なアラベスク様式の調停神様の本神殿内の広大な謁見の間にて、百年以上の経験のある熟練した四百名のエルフの職人が五十年の月日を掛けて織り上げた巨大な赤い絨毯に裸足で平伏して、恭しく深々と額を沈めました。
『そなたは予の異母弟であるヨーゼフ公爵閣下が治めるシュレジエン公国の臣民であるが、調停神でもある予を神々の一柱として信仰して多額の寄進を行っておるな』
『ははーーーーっ、調停神様。仰せの通りで御座いますっ!』
謁見の間に設置されている、調停神様の体格を測定して造られた世界で一つしかない黒檀製の神座に御腰掛けになられていられると思われる調停神様から、直々に玉音を賜る栄誉に浴しました。
『シュレジエン公国を代表する資本家であるそなたが寄進した金額の合計は莫大な数字となっておる。ここまで多額の寄進をされては、予としても何らかの形で報わねば神々の一柱である調停神としての面目が立たぬのでな。望みを言うがよい。若さが望みなら十代後半の若々しい頃の肉体に戻す事も出来るし、王位が望みなら無能な君主が治める王国をそなたの王国とするように取り計らおう』
若さでも王位でも望みのままだと仰せになられた調停神様に対して、私は赤い絨毯に額を沈めたまま。
『それでは御言葉に甘えまして、一つだけ御願いをいたします調停神様』
『好きな望みを言うがよい』
私は額を更に深く絨毯に押し込み。
『今後二度と私の事を本日のように呼び出したり話題にせぬように、心底よりの祈願をいたします。調停神様』
私の心底よりの祈願を聞いた、黒檀製の神座に御腰掛けになられている調停神様の視線を後頭部に感じました。
『そなたは商才だけの資本家では無いな』
『恐れがましい御言葉で御座います。調停神様』
『面を上げるがよい』
『はい。調停神様』
赤い絨毯から顔を上げた私の事を、黒檀製の神座に御腰掛けになられている調停神様は、愉快そうな表情で見下ろされますと。
『出る杭は打たれるのが世の常であるからな。今後そなたがどれ程に莫大な富を蓄えようとも周囲から嫉妬を買う事がないように、神々の一柱である調停神の予の神通力で取り計る事としよう』
『心底よりの御礼を申し上げ奉ります。調停神様』
この世で最も恐ろしいのは人の心です。これから私は信仰する調停神様の神通力により、どれ程富裕になろうともそれを原因に嫉妬を買う恐れはなくなりました。
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