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七.
「……で?」
運転席の徹が、バックミラーをちらちらと見ながら憮然とした顔で荒くハンドルを切るが、
「なんだ」
背もたれを大きく傾けた助手席からは、遊佐木があくび混じりに返事をする。
「目の錯覚じゃないかとは思うんですけど、後部座席に自称未確認生物の変質者がいるような気がするんですが」
「ん?あぁ、錯覚などでは無いぞ。色々詰問してみた結果、うちで飼育することになったんだ。何やら意外と色々役に立ちそうだったのでな。なぁ?」
軽く首を曲げ後部座席に声を掛ける遊佐木に、
「はい……一応、簿記とか秘書とか司法書士とかの資格も持ってますし、大手企業で働いてたこともありますので……」
「お前やっぱりただの元事務職の変態のおっさんだろ!?」
「いやいや……カッパです。おっと……皿に水分を補給しないと」
と、自称カッパは首を横に振りながら、黒いブラジャーの隙間からキュウリ型の小さな醤油差しを取り出し、キャップを開けると、中に入っている透明な液体を頭頂部に勢い良く浴びせかけた。
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