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翔琉が起きる少し前、私はボンヤリと目蓋を開けた。
天空に残る月がガラス越しに見える。
月に起こされたみたいだ。
半覚醒のまま腰に回る翔琉の腕と、背中で直に彼の体温を感じていた。
その時、母屋の灯りか点いた。
カーテンのない母屋の出窓越しに、寝室から出てくる津久井が見えた。
やつれた?
最後に津久井の顔を見たのは、いつだったろう…
同じ敷地に住んでいても、それ位スレ違っていた。私が忙しいのもあるが、お互い意識して避けてる感じ。
母屋の中で近くの灯りが消え、遠くが点る。
バスルームに移動したのだろう。
「ん、ん~」
後ろで翔琉の声、灯りの点滅で起きたのか。
昨夜は窓際にスクリーンをしなかった。
私は狸寝入りを急いでした。
翔琉の手が私の体を優しく撫で肩を抱く。
彼は私の左肩の後ろに口付けると、ベッドから降りていった。
欠伸と衣擦れの音がしたと思ったら、暫くして私の頬に温かいキスを落とし、指先が私の髪を解いた。
翔琉は優しい。
なのに私は起きて目を合わせ
「おはよう」
が言えない。
寝たふりを続けていると、部屋から出て行く音がした。
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