34人が本棚に入れています
本棚に追加
俯いた姿勢が彼女の顔を髪で覆い、そう言った時の表情は伺い様がない。
左手で髪をかき揚げ、右手で拾った鍵をコートのポケットに入れながら、屈んだ背を伸ばす彼女。
見惚れる程の一連の優雅な動き。
姿勢と所作のトレーニングの成果が現れてる。スカウト当時からトレーナーをつけた甲斐があった。
嫉妬で沸騰した頭の中で、そんな職業的見方をしている自分がいる。
「止めるって何を？」
俺は唾を飲み込む。
彼女は何を言う気だ！？
鍵を入れたポケットに手を突っ込んだまま、彼女は首を傾げ
「分かってるでしょ、もう終わりましたよね？アナタからのレクチャー」
瞳は俺を見据えてる。
「…だから？」
「だから、もう干渉しないで下さい」
口の中が渇く。
「…もう誰とセックスしようが関係ないと？」
「ええ」
ポケットの中の携帯をチラリと出し、時間を確認する彼女。
女優として少しは名が売れ始めたとはいえ、その冷淡な態度にカッとして、俺は彼女をドアに押しつけた。
「！」
彼女の頬近くに両手を置き、更に身体を近付け、所謂壁ドン状態で閉じ込めた。
最初のコメントを投稿しよう！