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彼女がゆっくりと誘う様に脱いでいく。
灯りを消すと今夜の月明かりが、僕達を照らす。露になった白磁の肌が青白く輝く。
数多の虫を吸引する様な、そのスタイルと匂い立つ淫靡な薫りは、初めて彼女にあった頃には無かった。
凛と咲き始めた華の蜜を欲する虫達。
それらをあしらう為に、僕は選ばれたと今は思っている。
翔琉という芸名で売り出し中の僕と、ズブの素人の美希。
あの時期、2人とも一緒に演技やボイストレーニング、姿勢や所作の指導も受けていた。
当初うちの事務所の影ボス、津久井にスカウトされた彼女に、周りは興味津々だった。
色仕掛け?
自分達には分からない原石?
様々な憶測が飛び交ったが、実際の彼女は容姿も性格もごく普通だった。
強いて言えば女子にしては背が高い方。でもモデルならそんなのザラにいる。
トレーニングルームで会って、他愛もない話に興じているうちに、警戒心が解けた。
気心が知れ、郷里に住む近所のお姉さんの様に思えてきた。
その矢先、僕らに事務所が提案してきた。
姉弟みたいな年齢差を利用して、カップル売りしないかと。
勿論、ソロで仕事をこなす事は妨げない。
折に触れトークで相手の名前を出して、同郷の2人が互いに意識して、切磋琢磨してる事をアピールする。
僕にも少しはファンがつき始めたといえ、一部のメディアに取り上げられただけじゃ、周知力が足りない。
世の中、外見が良い男女は沢山いる。
事務所は売り方を模索していた。
2人を只の微笑ましい異性の友人同士と見るか、以前より恋人関係ととるかは、その人次第。
両方にとれる様、色気の強弱をつける様言われた。
地方から成功を夢見てきた青年か、
年上の女性を誑かす小悪魔キャラか。
なので、2人で友人以上恋人未満の関係を、何かにつけて演じてきた。
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