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「…翔琉さんは恋人、いないの?」
彼女から精気のない目を向けられ、何となく聞かれる。
「へっ!?あっ!、ああ…そっちの付き合う?」
以前、姉弟キャラで売ってた時トーク番組や取材の際は、お互い思いっきり呼び捨てだったしスキンシップも多かった。
だが基本彼女は、年下の僕にも『さん』付けで呼んでる。僕の方が事務所に所属したのが早かったから先輩だと。
彼女のそういう義理堅いメリハリも、好印象の一つ。
「ハハハ、残念ながら居ないよ。欲しいんだけどね、毎日の癒しに」
僕は苦笑いして頭をかく。
「癒し…」
「そりゃ、応援してくれるファンの為に日々頑張るよ。でも最近一日の終わりに、不特定多数より特定の人に『今日も頑張ったね、お疲れ様』って言われたら、励みになるし嬉しいかなって思う様になってさ」
「特定の人…励み…」
軽く指を曲げた拳を口元に当て、美希さんは何やら小声で言って考えている。
「本当に大丈夫?美希さん」
彼女が余りに長い間俯いていたので、僕は心配になった。
突然彼女は顔をあげると 、
「翔琉さん!私と恋愛しましょう、恋人同士になりませんか?」
そう言って頬に赤みを宿した。
「えっ!ええ~」
何だか今日の美希さんとの会話は、聞きづらいラジオの周波数を探すみたいだ。
話が微妙に繋がらない。
その時先生が来てそれ以上の話はなく、結局美希さんは一緒に指導を受けた。
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