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そして僕に視線を戻すと
「ほら、私達マトモな恋愛したくても、なかなか大変じゃない。いざ相手がいたとしても本当に自分が好きなのか、それとも芸能人として好きなのか?腹の奥や裏探るのも疲れるでしょ」
と肩を竦める彼女。
腹の探り合いする段階で、恋人同士じゃないだろ、それ!?とツッコミたいが、
「僕とならお互い気心が知れてるしって?」
端的に結論に導く。
「ビンゴ」
彼女は僕を指してニッコリ笑う。
その笑顔が、営業用じゃないところが救いだった。
腕に感じる重みで目が覚めた。
視界に入る空の色から夜明けが近い事を知る。
首を横に倒すと間近に、腕枕にのったあどけない彼女の寝顔。
数時間前までの妖艶な仕草の彼女と、どちらが本当の姿か時々分からなくなる。
ベッドから抜け出し身なりを整え、そっとドアを開けると暁の空気は冷たい。
静かに彼女が言う癒しの空間から去る。
津久井が住んでいる母屋と玄関も違うが、いつも釈然としない。
彼女の室内は素敵なレイアウトだと思うけど、彼と同じ敷地内は頂けない。
誤解を招くから早期に引っ越した方が良いと、彼女には再三忠告している。
昨夜?今夜?の情事を思い返すと、つい母屋の出窓前を通るあたりから軽くスキップになり、門を出るあたりから鼻歌が出た。
浮かれてる。
それ位キモチイイ。
僕が求めてるモノを与えてくれる彼女。
事務所を通して恋人宣言したけど、それ以上も夢見てる自分がいる。
だから尚更あの男から引き剥がしたい。
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