青空の宅配便

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きょろきょろと辺りを見回す。 私が住んでいる部屋は、10階建てマンションの最上階、角部屋。 東側は何もない空中だし西側は隣の部屋と仕切られていて、物体が飛んでくるはずがない。 見上げると、コンクリートの出っ張った屋根と青空と消えつつある白線。 どこから落ちてきたんだろう。 突然の空からの落としもの――赤ちゃんは、かなりの衝撃があったはずなのにすやすやと寝ている。 UFOキャッチャーみたいに開いた股には、ちっちゃいゾウさんがこんにちはと言った。 男の子だ。 ボンレスハムのようにぷっくらとした腕を人差し指で押して見ると、想像どおりの弾力のある感触。 ほんものの、人間の赤ちゃん。 人間の赤ちゃんとわかったところで、どうしよう。 赤ちゃんのお母さんはどこにいるのか。 それよりなにより、私はこれからどうすればいいのか。 布団の下に両手を入れ赤ちゃんごと持ち上げて、夕日の差し込む部屋の中に入る。 床にそっと置いたところで、赤ちゃんの頬がピクッと動いたかと思うと、アッアッと、呻きながら両腕を動かし始めた。
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