落ちたもの

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うちの中学には学食がある。 部屋は二百人は優に入れる大きさで、長机が等間隔に幾つも並ぶ。 壁と天井はガラス張りで、開放感をもたらす。 室内は白を基調とした作りで、清潔感あふれる作り。 学食のシステムは券売機で購入してから、商品が出来たら受け取る方式。 ここでのおススメはカレー。 いや、カレー以外ありえないのだ。 理由は至って単純。他がマズイからだ。 折角二百人規模のデカイ食堂の設備があるというのに、利用者はなんと数十人程度というのが現状を物語る。 初めは自分も他の商品も行けるだろう、と安易に挑戦した記憶がある。 だが、現実はあまりに非情だった。 別に学食を利用しなくても、購買のパンや弁当を利用する手もある。 だが、それでも俺が利用するのは理由がある。 安い。 何と一杯百円という驚きの安さ。 アルバイトでなんとかやりくりしている俺にはこの安さは破格。 今日も俺はカレーを頼んで空いている席に着く。 相変わらず席は取り放題。どこでも座ることができるので、窓際の席へと着席する。 「おや、そこに見えるは一馬(かずま)じゃないか」 聞きなれた声に顔を上げる。
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