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颯はいつも一輝と一緒にいた。
学校で同じクラスになった時は、必ず隣の席か一輝の前か後ろの席を陣取っていた。
授業を真剣な眼差しで受けるている顔、ちょっと眠くなったけど、頑張って起きていようと眼をしばしばしている所を横で見ていて可愛いなと思った。
一輝の前の席になった時は、そんな姿を今しているのかなと思うだけで、ほっこりしていた。
後ろの席になった時は、ずっと一輝の背中を見ていた。背筋が伸びて、いつも綺麗な姿勢をしている一輝の後ろ姿にドキドキしていた。
そして、後ろを向き目鼻立ちがハッキリして、クリクリな目で颯を見てくる一輝。颯は自然と笑えた。でも、どうしても”あの笑顔”になる。
休み時間は、いつも喋っていた。
一輝のちょっと低めの声が大好きで、声を聞くだけで心地よかった。自分も、もうちょっと低い声がよかったなぁと颯は思うこともあった。
性格も昔と変わらず、優しくて気弱だから、守ってあげたいと思う。
昼休みは、颯の従兄弟で20歳上の蒼太が養護教諭をしているので、保健室でお弁当を食べていた。
蒼太は、颯より少し低めの身長で、人の良さそうな優しい雰囲気をただよわしている。が、怒らせたら、冷徹な眼光を放ち鬼とかする。
颯の妹風香も同じ学校の看護科に通っていたから、一緒に食べていた。
「一輝、この卵焼き私の自信作!食べて!はい、あ〜ん」
一輝は、「あ〜ん」と、口を開け食べた。
「美味しい??」
「うん、美味しいよ。」
風香は、ニコッと嬉しそうに笑う。一輝もその風香に優しく笑う。
「じゃ、僕も一輝に卵焼きあげる、はい、あ〜ん」
一輝は、やめろと言って、顔を背けた。
「なんで、風香はよくて僕はだめなの?」
「男同士がそんな事普通気持ち悪くてしないだろ?」
颯は、胸がチクッとする。
「それもそっか〜」
颯は、いつもの笑顔で答えた。
”一輝、そんな事をしたいと思う僕は気持ち悪いの?”
蒼太は、そんな風に、颯が思っているのを察しているのかいないのか、話題を変えた。
「そうだ、今度の連休温泉旅行行こうかって荻野先生が行ってたんだ。お前らもいくだろ?」
「行く行く!一輝も行くよね?」
「うん。颯は?」
「え〜、僕どうしようかなぁ〜。」
「え?行かないの?颯。」
それはもちろん行きたいけれど、温泉という事は、一輝と裸同士になる訳で、普通でいられる自身はない。
「颯、俺はお前とも一緒に行きたいよ。」
一輝のクリクリな目が颯を真っ直ぐ見てくる。
「分かった、分かった!行くよ。一輝がどーしても僕と行きたいなら仕方ないなぁ〜!」
颯は、いつもの笑顔で一輝に向ける。
「一輝はどーしてもなんて言ってないでしょ!颯!」
「ん?僕はそう聞こえたから、いいのー!」
「ったく、調子いいんだから。」
風香は、プリプリ怒る。
「まあ、皆楽しもう!」
蒼太は、風香を宥めながら言った。
”僕、普通に裸同士で一輝と温泉入れるかな。”
颯は、そう思っていたのだった。
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