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昼休みも終わり、颯は一輝と一緒に教室に戻っていた。
渡り廊下を歩いてると、一輝はふと足を止め、そこから見下ろす。
一輝の目線の先には、一人の女の子がいた。
その子は光沢のある綺麗な黒髪のストレートロングが特徴的で、オマケに美人。だけど、身体はガリガリでいつも顔色が悪くて、眼はうつろ、颯はまるで幽霊みたいだと思っている。
だけど、一輝はちょっと違って見えてるようだ。
一輝がその子を見かける度に立ち止まり見つめるようになったのは、蒼太がよく彼女に声をかけているのを見てからだった。
颯は一輝が初めて彼女を認識した時の事はよく覚えている。
それは、廊下で蒼太と一輝と颯の3人で喋っていた。その時、彼女が颯達をスっと横切る所だった。
「井川さん、今日はいつも以上に顔色悪いですね?保健室で休みますか?」
彼女は、ビクッと立ち止まり、ただ頭を下げてその場を離れていった。
蒼太はそんな彼女を心配そうに彼女の背中をみていた。そして、どうにか力になってやりたいのになぁと、呟いた。せめて、声がでればな。
井川愛子という女性とは失声症になっていた。詳しい事は蒼太は教えてくれなかった。
それが初めて彼女を認識した時だった。それからだ、一輝が彼女を気になりいつも見つめていた。
”一輝、今隣にいるのは、僕だよ。僕を見て?”
「一輝、早く行こ!」
いつもの笑顔で、一輝に言った。
「ああ」
と言って、後ろ髪を引かれるように、彼女を見ながら、何か考えるふうな表情をして歩く。
颯には眼を向けない。
颯は、胸がまたズキンと、傷んだ。
教室で、颯が一輝と喋っていてもそうだ。ふと窓の外を見た時彼女がいたら、颯が声を掛けるまでずっと見ている。
そして、何か考えるふうな表情をして、颯の話なんて上の空だったりするのが当たり前だ。
”ねぇ〜一輝、僕は目の前にいるんだよ。僕を見てよ”
そう思って颯は、また胸が痛む。
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