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吉田颯は、幼稚園の頃から隣に住む荻野一輝が好きだった。
彼は、目鼻立ちがハッキリしていて、特に目がくりくりして可愛いかった。
それに優しい彼は気が弱い所があって、颯は守ってあげなきゃと思っていた。
そんな彼を友人として好きなんだろうとずっと思っていた。
だけど、小学6年生の時双子の妹風香が、20歳上の従兄弟の蒼太兄ぃに聞いた事があった。
「蒼兄ぃ〜、私、一輝を見ていると胸がドキドキして苦しくなるの。なんでかなぁ?」
蒼太は、風香の目線に合わせる為に膝をつき、優しく笑いながら答えた。
「それはね、”恋”してるからだよ。風香は、一輝に恋心をいだいてるんだ。」
そっかぁ〜これが恋かぁ〜。と、顔を真っ赤にして、嬉しそうに笑う風香だった。
颯は、一輝の事を思い浮かべる。
一輝の目がくりくりで優しい笑顔に胸がドキッといたんだ。
自分も風香同様、一輝に”恋”をしているのだと自覚したのだった。
それを自覚してから、一輝に会うとドキドキしっぱなしだったし、風香が一輝にしがみついたりすれば、ムカついて嫉妬もした。
でも、男が男を好きになるなんて、普通じゃないと思っていた颯は、そんな素振りを誰にも一切気付かれない様にした。
それを隠すために、”何を考えているか分からない笑顔”を作り上げていった。
それに、颯は小さい時から異常な程の記憶力を持ち、
本をサラサラと捲るだけで、その本に書かれている文章を一語一句全てを暗記することが出来た。
また、1度見た風景も、寸分の狂いもなく全て覚えることができ、絵にすることができた。
小学校の算数なども颯には簡単過ぎて、蒼太が持っている難しい本をスラスラ読んでいた。
そんなだから、両親が颯にIQテストを受けさせた。すると、180もある”天才”だということがわかった。
両親は颯のような子供を教育する為のカリキュラムがあるアメリカで育てようとした。
だが、颯は、何がなんでも一輝と一緒にいたかったから、バカな振りをし始めた。
颯は、本当の自分を見せないようにしていた。だから、その”何を考えているか分からない笑顔”をつくるのは、容易なことだった。
それが、自身を苦しめる事になるとは、この時は全く思いもしていなかった。
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