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教生の教育実習3日目。
颯は、いつも保健室で昼ご飯を食べていた。
昼休みになると、颯が隣の席にいる一輝を誘って一緒に保健室に行くのが日課だった。
だが、この日は違って、一輝には目もくれず教室を出て行った。
一輝は、それを少し寂しいと思ってしまった。
「昨日、怒らしたもんな。」
颯は、教生がいるであろう理科準備室に向かった。
「先生〜?」
理科準備室は、職員用机が縦並びに4つほどあり、殆ど使われていないので、書類や本類が積み重なっていた。ただ、おくの机だけが整頓され、そこに教生が何か書類を見ながら座っていた。
そして颯を見て、優しく笑う。
「いらっしゃい。」
颯は、嬉しそうに笑い、理科準備室の中に入って行った。
教生は立ち上がり、颯においでというかのように両手を前に広げる。
颯は、教生に抱きついた。教生も、颯の腰に手を回し抱きしめた。
そして、颯は自分より背が高い教生を見上げると、教生は優しく微笑んだ。
ゆっくりと颯の顔に近づけ、そっと唇にキスをした。
それは触れるだけのキスだった。
「先に昼ご飯食べよう。その後この続きをしよう。」
颯は、少し頬を赤くし頷いた。
教生は、颯を奥のソファーに座らせて、その隣に密着して座った。
颯がお弁当を開けると、バランスが取れた色とりどりのおかずが詰められていた。
「美味しそうだな。母親が作ってくれてるのか?」
「ううん。両親は海外で働いてて一緒に暮らしていないんだ。従兄弟の蒼兄ぃ、あ、ここの養護教諭ね、彼が作るか、双子の妹の風香が作るかどちらかだよ。今日は風香が作ってたよ。」
「そうか、お前は作らないのか?」
「僕いつも寝坊しちゃうから。元々蒼兄ぃがメインで作ってたけど、風香が一輝に自分が作ったお弁当食べさせたいからって作り始めたんだよ。」
颯は、少し寂しそうに弁当を見る。
「妹も一輝君が好きなのか?」
「うん、そう。妹は皆が応援してた。一輝に思いが届くようにって。僕は、、、」
教生は、まだ完全には吹っ切れるわけないよなと思った。
「その玉子焼きうまそうだな。」
「食べる?」
颯は、玉子焼きを1切れお箸で挟んで、教生の口元に持っていく。
教生は、口を開け玉子焼きを食べた。
「うまいな。」
颯は嬉しそうに笑った。
「一輝はこうやって食べさそうとしたら、気持ち悪がって食べてくれなかったんだ。」
「そうか。俺なら喜んで食べるがな。」
颯は一層嬉しそうに笑った。
「でも、それがお前が作ったものだったら尚いいな。」
「え、本当?なんか女子がやるみたいじゃん。」
「ダメか?」
「ううん、いいよ。明日から頑張って作ってくるよ。」
「楽しみにしてる。」
教生は、颯の頭を撫でてやる。
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