第一章

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その日の放課後、颯は、隣にいる一輝に目もくれず教室を出て行った。 そして、教生のいる理科準備室に向かう。 理科準備室前に来て、扉を開けると教生はいなかった。 颯は、中に入り扉を閉めて奥のソファーで座って待つ事にした。 暫く待っていると、颯は眠くなりソファーに横になって眠った。 教生は、担当教官に実習の事で話す事があり、理科準備室に行くのが遅くなってしまった。 理科準備室の扉を開けると、奥のソファーで颯は横になって眠っていた。 教生は、颯に近づきその場に片膝を付いてしゃがむ。 颯の綺麗な顔を眺めながら、頭を撫でる。颯の髪の毛は、サラサラで触り心地がいい。 まだ会って数日しか経ってないのに、颯が可愛くて仕方なかった。 周りの人間には、何を考えているか分からない笑顔を振りまき、本心を全く見せない。卒なく何でもこなせて、完璧に見えるだろう。 だが、本当の颯は、1人の人を不器用に思い続ける一途な人間である。教生には、ちゃんと喜怒哀楽な感情が見える。自分も、颯に似たような所があるから、分かるのかもしれない。いつも知的で理性的な人間を装い続けている教生だからこそ颯とは分かり合える、そう思うのだった。 教生は、そっと颯の唇に口付ける。触れるだけのもので、顔を離すとそんな不器用な颯の事が愛おしいと思いながら頬に手を当てた。 "見つけた。この純粋な男の子が欲しい。一瞬で分かった。運命の出会い。愛する男の子と出会うために俺はここにきたんだ。" 颯は、なんとなく唇に柔らかい感触を感じ目が覚めた。 目の前には、教生が颯を優しくほほ笑みながら、手を颯の頬に当てていた。颯は、嬉しくて自分の手を教生の手に重ねる。 「遅くなってすまなかったな。」 「ううん。大丈夫だよ。」 颯は、起き上がりソファーに座り直す。その隣に密着するように教生が座る。 教生は、颯の頭を肩にもたれかからせ、反対側の側頭部に手を当て撫でてやる。 「昼休みの後、ちゃんと授業受けたんだろうな?」 「フケちゃった。やっぱり落ち着かなくてトイレで籠ってた。ごめんなさい。」 「ったく、仕方ないな。昼休みは軽くキスだけだな。そして、明日からちゃんと授業受けること。」 「はい。」 「放課後いっぱいしてやるから。」 「うん。」 颯は、恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。 「あと、昼休みは勉強もしようか。大学のお前が興味持ちそうな本や論文を持ってくるから。」 「うん。先生と一緒に勉強する。」 教生は颯の顔を自分に向かせ、キスをした。 教生は唇が触れた瞬間、颯の口を舌でこじ開けねじり込む。そして颯の舌を絡ませる。 いきなり深いキスになるから颯は、驚いたが受け入れる。 ”先生とのキス気持ちいい。” 「ん、ふぁ、」 声が漏れ出てしまう。 深くて長いキスをした後、教生は颯を抱きしめてやる。 「今日は、もう遅いから帰りなさい。また明日な。」 「うん。また明日。」 颯は、立ち上がり理科準備室を出て行った。
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