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そして、真由子達の会のメンバーからのファンレターがドッサリ箱の中に入ってあった。
なんとなく、颯はその中の一通を取りだし読む。
その手紙には、結婚を祝福する言葉から始まり、いかに自分が2人を尊く思っているかということを、3枚もの便箋にびっしり書かれていた。
自分達がこんなにも、沢山の人に愛されている事に嬉しく思う。
会長が真由子という事は、一輝との一件を知って、颯を励まそうとしてくれたのだと思うと胸が熱くなる。
「真由先輩、ありがとう。」
優也は、そっと颯の顬にキスをする。
そして、最後に小物用の立方箱と、封筒が残っていた。
颯は、誰からだろうと、その箱を開ける。
中には、雪だるまのクリスタルスノウドームが入っていた。
「こ、これ、、、、」
颯は、封筒からお祝いカードを取り出す。そこには、几帳面な文字が綴られていた。
"結婚おめでとう、お幸せに"
ただ一言書かれていた。
颯はそれを読み、雪だるまを手に取ると、蹲り泣き崩れる。
この雪だるまは、一輝の部屋の棚の上に置かれていたものだ。
颯は、一輝の家に入り浸っていた時、一輝のベッドに寝転びながら、この雪だるまを光にかざしていた。
その雪だるまの輝きを見ている時は、何故か心が落ち着いた。
初めて一輝への気持ちを自覚して心がザワついた時。
一輝への思いが溢れそうになるのを必死に押さえ込もうとして、苦しかった時。
一輝が愛子を好きになっていく過程を辛いのにただ、笑って見るしかなかった時。
一輝が颯を見ようとしてくれずに、泣きそうだった時。
そんな時、いつもこの雪だるまを光にかざしていた。ただ、ぼんやり見ていた。
それを、一輝は気づいてた?僕の事、見てくれていた?
「一輝、、、一輝、、、」
優也は、颯の背中を擦りながら静かに話す。
「颯?一輝君はね、お前をちゃんと見ていたんだよ。病院で一輝君のお父さんがお見舞いに来た時、颯はパニックになって、鎮静剤を打たれてぐったり眠ったね?あの後、一輝君がお前に会いに来たんだよ。酷い事言って悪かったって。泣きながら颯の頬を撫でて謝ってたんだよ?何度も、何度も。」
颯は、顔を上げて優也を見つめる。
「え?」
「颯の気持ちが落ち着くまで、自分からは会いに行かない。ただ、颯と会えた時は心から謝って、親友になりたいって言ってたよ。俺がプロポーズした時の事覚えているか?あの電飾、一輝君も一緒に飾ってくれたんだよ。颯に幸せになって欲しいって。」
それを聞いた颯は、顔をクシャクシャにして、号泣した。
優也は颯を強く抱きしめてやった。
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