第1話 『となり』 (おためし回)

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第1話 『となり』 (おためし回)

 『このお話しはフィクションです。また、科学的考察は、一切行われておりません。』  みなさん、こんにちは。  ぼくは、このお話の、第1の語り手です。    我が家は、小惑星の衝突により分解した旧地球の、欠片のひとつに建っています。  小さな欠片ですが、それでも、周囲が5キロくらいはあります。  とはいえ、断崖絶壁ばかりで、実際に生活できる場所は、我が家のある、このあたりの場所しかないのです。  ただし、この星全体は、我が家の私有地です。また、断崖絶壁には、ちょっとばかり貴重な資源が埋まっております。  いざとなれば、これで、稼ぐことも可能です。  おかげさまで、科学技術の発展により、生活のためのライフラインは完備されております。  また、重力や、大気も、地球上と同じレベルに調整されております。  もっとも、ぼくは、地球のことは知りませんが。  我が家専用の宇宙駐機場があり、プールや運動場も完備されております。  なので、自家用宇宙艇で、商用欠片星の(通称スーパー星)大型スーパーやデパートなどに買い物に行けば、なんでも揃います。  父は、分裂地球政府の高官でしたし、大企業の経営者でもありましたから、こうした、比較的恵まれた環境に住むことが、できております。   しかし、その父は、昨年、火星植民団地の工事視察に行く途中で、宇宙海賊に襲撃されて、行方不明となりました。  母も、一緒だったのです。  高額な宇宙海賊保険を掛けていたので、かなりの保険金は入りました。  まだ、行方不明の状況なので、この先、死亡が確定されらたら、その10倍は支給されるでしょう。  発見されても、返却は必要ありません。  ときに、目と鼻の先には、第2005欠片集合住宅星があります。  ここには、10階建ての地球政府立アパートが30棟建っております。  様々な社会的、人種的な、ルーツをもつ人々が、集団で暮らしております。  全体的に、中の下から、中の中くらいまでの資産レベルにある人々が暮らしており、75%くらいの家庭は、自家用宇宙艇を持っています。  それ以外の方は、宇宙バスや、急ぐ時は、宇宙タクシーを利用します。(それはもう、宇宙タクシーが一番お高いです❗)  その、さらに少し離れた先には、まあつまり、ここも、おとなりなわけですが、同じ地球政府立でも、入居費が安く、あまり生活費が要らない、格安アパートが群集している、第5001欠片集合住宅があります。  もちろん、お安くするためには、それなりの工夫があります。  プライバシーの保護は、最低限で、壁は薄く、昔の落語に出てくる長屋のような感じです。  お風呂は、公衆浴場になっていて、各世帯にはありません。  駐機場などの施設も、各個にはありません。  移動は、欠片星内なら歩くか、星外に行くには、小型簡易バスを使います。  自動車といわれる、大変にレトロな乗り物を持ってる方もあります。  また、日用品や食料品などは、星内に、小さなスーパーがありますから、あまり出歩く必要はありません。  もちろん、通勤バスには、大型車が使われます。  すし詰め状態にはなりますが、それは、映像で見た、昔の、トウキョウとかいう巨大な街と同じことです。  まあ、なので、生活費が非常に安く済むので、経済的基盤のない若者や、社会的な弱者、つまり、高齢者とか、失業中の方とか、なんらかの個人的負荷資産のあるかた(昔は、しょうがい者と呼ばれたりもしました。現在は、資産と考えられています。)の中で、一人で生活可能な方などが中心に住んでおります。  このお話しの、第2の語り手である方も、現在は、そこに居住中です。  彼は、腎臓が半分壊れていて、精神的にやや、問題を抱えている方ですが、それだけのことです。  ところで、浮いた話で恐縮ですが、ぼくの恋人は、その、第5001住宅におります。  はっきり言って、いささか、貧乏です。  それは、単に、運が回ってこなかったというだけのことです。  それは、数学的な確率の問題が主であります。  しかし、父は、彼女との交際には、反対でした。  その理由は、彼女の家族が支援する政党は、父の支援する政党と、犬猿の仲だったからです。  バカな話だと、ぼくは思いましたが、父の権威というものは、侮りがたいものだったのです。  父母が、宇宙海賊に襲われたのは残念です。  ただ、ここは、ぼくにとっては、ある意味、チャンスかもしれませんでした。  ロミオさんとジュリエットさんのお芝居は、今でも『宇宙シアター欠片星』で、上演されることがあるくらいの名作ですが、あんなことにはなりたくないですし。                        つづく   ************   ************  ※ おためし回ですので、続かない場合も、ないとは言えません。    やましんの、頭の働き方次第であります。 ☺        
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