第7話 『南極の欠片』 その4

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第7話 『南極の欠片』 その4

 そうして、掘ること20時間。  ついに、ぽかっと、空洞に出たのです。  さて、ここが問題です。  この小惑星は、丸いコロッケのできぞこないみたいな形です。  長いところの半系が、300キロくらいあります。  短いところは、200キロ以下です。  ここは、地上から20キロくらいの場所です。  上から掘って来たから、天井から足が出てくる感じになります。  そこが天井だとして、空間の下側が床側だとしまして、その間が二メートルくらいなら、ま、なんとかなるとして、こういうふうに、1000メートルくらい空いておりますと、これは、かなりやっかいです。  太郎君は、うっかり落っこちそうになりましたが、そこは、ロボット君が食い止めました。  重力は小さいけれど、それでも、おっこちます。  『うわあ。これは、すごいなあ。』  ひろこさんが、そこんところは気にも留めずに、やたらと感心しています。  叔父さんもまた、双眼鏡で穴の底などを見ながら言いました。  『ここは、おかしいな。ものすごく人工的な空間だね。床側は、すべすべなようだ。自然のものじゃない。』  『ぼくにも見せて。』  太郎君が双眼鏡を受け取ろうとしたところ、ひろこさんの手が一瞬早く、それを、叔父さんの手からもぎ取りました。  『ああああ! ひどい。』  『あんたは、弟なんだから、我慢しなさい。』  『いつも、そうなんだから。』  姉は、お構いなしです。  『ふうん。まっ平らですね。ガラスを磨き上げたみたい。やはり。氷かな。』  『ここの気温は、5℃だよ。』  太郎君が言いました。  『まあ、どやって降りるかだな。ロープを垂らすには、高すぎる。おまえ、なんかできないかい?』  叔父さんは、ロボット君に話しかけました。  『空は飛べないよ。自殺は禁止です。』  『ああ、そうだな。自殺はしなくていいよ。』  『でも、なんで、ここ、明るいの? へんよね。』  『そうだなあ。地下の洞窟なのだから、真っ暗なはずだ。とくに照明器具なんか見当たらないし。全体が発光しているんだ。』  『やはり、なんか、いるんだ。』  『いやだあ。おうちの下に、なんか、住んでるなんて、気味悪いわ。』  『いやいや。どうやら、そうかもしれない。ほら、おかしなのが来たぞ。』  そうです。まるで、大きめのドロンみたいなものが、向こうの方からやってきたのです。  📢『あ~~~。あ~~~~。みなさん、ようこそ。これから、降下用のエレベーターをお持ちします。少し、おまとくらさい。』  『なんか、ことば、間違ってるみたい。』  『異世界の雰囲気があって、いいなあ。』  叔父さんが、妙に感心しています。  『やはり、ぼくの推測は、正しかったんだ。ここは、おそらく、伝説の『アトランティーウス』か、『ジアポナ』か、『アモリア』の一部か、そうしたものに違いない。南極大陸の下に、埋まった、幻の都市だ。』  『嘘みたい、おじさんの推測が当たるなんて、光速より早く飛ぶみたいなかんじだものね。』  『よくない、かんじだ。でも、ほら、きたぞ。これは、でかいなあ。』  そうです。かなりでっかい、『昇降機』が、現れたのです。  つまり、それは。高さが1000メートル近くはある、巨大な昇降機なのです。  『みなさま、よそこそ、わが、『南極ワールド』に、お越しくださいました。開業以来、最初の公式なお客様です。パンパカパカパカぱぱぱ~~~ん。』  けたたましいくらいの、ファンファーレが鳴り響きました。  そうして、沢山の打ち上げ花火が、そこらじゅうに花開いたのです。  地上には、なにやら、わんさかと、うごめく者たちが、どこからともなく、湧き上がってきていました。    ******************** 123b4a39-675e-4fb8-ad19-8bfc49841a2b 970bc6a8-f99a-4fb1-b866-c7c6664bd181  該当小惑星の写真がないため、お月さまで代用いたします。(筆者直撮影画像)        
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