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浮沈集合島カサルシエラ
この世界にただひとつある大陸のほぼ中央に位置するアルシュファイド王国の南に、その島はあると言う。
かつて水竜の島とされた、浮沈集合島カサルシエラは、15に分かれる島々が密接しながらも、順に浮き沈みを繰り返していた。
「それでは、行ってきます」
彩石(さいしゃく)判定師ミナ・イエヤ・ハイデルに応える、双王の1人政王アークシエラ・ローグ・レグナ、通称アークの顔は、ちょっぴり強張っている。
「ええ。気を付けて」
なんとかそれだけを言うと、伯母である前代政王ネイラシェント・クィン・レグナ、通称ネイが快活に言った。
「そんじゃ、あとのことは頼んだよ!」
「え、ええ…」
「ほらほら、しゃんと立つ!背中が曲がってるじゃないか!」
心に受けた衝撃から立ち直れないアークだけれど、敬愛する伯母に励まされて背筋を伸ばした。
「はい。…では、伯母様、ミナ。無理はしないように、させないように、お願いします。行ってらっしゃい」
今回の旅では、一気に同行者が増えた。
これまでは、どちらかと言うと、ミナは守られる立場だった。
今回も、その点、変わりないところもあるけれど、一団に対しての責任は、それなりにあるし、負うべきことは、自覚している。
ミナは、アークに笑顔を向けたけれど、背を向けた瞬間、それは消えて、唇を引き結ぶ。
古い言葉で、戦いの誓いを示す、彩石騎士専用船バルタ クィナールを見上げて、深く息を吸った。
落ち着いて、すべきこと、要点を、見誤らないように。
努めなければならない。
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