本国にて

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本国にて

一方、アルシュファイド王国では、軍艦の準備が進む。 昨日(さくじつ)のうちに、至急の知らせを受けて、移送命令が下ったのだ。 移送内容は、人物で、赤璋騎士以下、騎士たちと、高位外交官。 専門職官吏も()るが、そちらは、陸路の備えだ。 最高速戦艦テイーズリーの客室は、そう広くはないのだが、今回は、とにかく最速を試みるのだということで、選ばれたのだ。 ちょっと桟橋に目をやれば、赤璋騎士一行が集まっているところが見えて、いくらか話した(のち)(だん)梯子(ばしご)を上がってくる。 戦艦と言えど、いや、だからこそ、現役の彩石騎士が、船や海軍の視察ではなく、任務のための移動手段として乗船することは、長い歴史を見ても多いことではなく、乗組員の緊張は(いや)()す。 そんななか、明るい笑顔の赤璋騎士は、緊張すんなと、案内係の船員の背を叩く。 「ただの迎えだ!帰りは客船だから、俺たちを送るだけ!身内の扱いに気を使うことは、ねえからよ!」 そんなことを言われて、すぐには承服できないが、なんと答えたものかも迷う。 艦内を案内する前に、桟橋を離れるテイーズリーの乗組員は、客たちと共に、見送りの中に、政王の姿を見付けた。 「行ってくるぜ!」 一声(ひとこえ)掛けると、彼はもう、後ろを見ない。 進路に顔を向けて、口元には、期待の笑み。 彼の行く先に何があるのか、なんだか知りたいなと、思った、藁の日の朝だった。
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