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―海を渡る―
深夜、見張り台の者は仰天して、尻を付いた。
真後ろを警戒していた相棒が、突然、背中にぶつかられて驚き、避けたためだ。
「なんだよ!」
突然のことに責め立てる声色に、こちらも怒鳴ってしまう。
「避けることないだろ!」
「いきなりぶつかってきたら驚くだろ!」
「こっちだって驚いたんだよ!」
「何に…はっ!」
異常事態が起こったのなら、言い合いをしている場合ではない。
鋭い息を吐いて任務に立ち返り、見張りの若い騎士は、急いで立ち上がる相棒が、つい今まで見ていた方向に風を放った。
「何を見た!」
「そ、それが、でかいボゥで…」
「でかい棒?」
「白い奴らが、3頭も…」
その言葉で、ボゥの間違いかと自分の勘違いを改めた時、暁月の光に、きらきらと反射する白い色を見た。
「違う!狼だ!」
叫んで、緊急の知らせを飛ばした。
それが終わるのを待って、立ち上がった相棒の若い騎士は、既に双眼鏡の必要のない彼らを肉眼で確かめながら言った。
「あれ、透虹石の?」
「いや、それにしては、白すぎる。あの速度じゃ…声掛けて、いいかな!?」
「でも、勝手な」
その時、返信が届いた。
「確認した。周囲に警戒、刺激を与えるな」
短い指示に、2人は、安心して息を吐き、緊急時の態勢に入った。
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