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アンビシャスカード(1/4)
僕はトランプで手品をする。僕がトランプを取り出すと、みんなの耳が一斉にこっちを向くのを感じる。
「耳?」と違和感を持ったそこのあなたは正しい。僕の手品はちっとも受けない。
アンビシャスカードという技がある。カードの束の真ん中にカードを差し込む。指をパチン。あら不思議、真ん中に差し込んだはずのカードが、一番上に来ているではないですか!
で、そういう時に、「お、おう」的な反応をされると、手品をやっている側としてはめちゃくちゃへこむ訳で。で、もうやけになって、本当に適当にカードを2枚選んで、
「今出た2と8、つまり28ページ、次の社会科の授業で、唐突にここがまるっと、抜き打ちの小テストで出るので、準備しておくのがいいと思うよ」
そうするとびっくり! 次の授業、本当に抜き打ちテストがあって、28ページの内容がそのまま出たではないですか! ほんとびっくりだよ!(主に僕が!)
それ以来、再度テストの占いから始まって(←当たった)、部活の次の試合の趨勢だったり(←当たった)、そうして、占いと言ったら、行き着くところは恋の占いだったりしますよねぇ。
恋の占いはどうするかというと、
① 相手の話すことを、うんうん、としっかり聞く
② それはいいね、すごく素敵な気持ちだね、などと、全部肯定する
③ カードを適当にめくる
「3が出たね。きっといつでもいいんだろうけど、もし告白するとしたら、3日後が一番いい感じに出来ると、カードは言っているんじゃないかな」
④ ↑など、適当なことを言う
そうするとあら不思議。本当にその子は告白に成功して、律儀にも僕に報告してくれて、「実は、告白する前日に、彼がたまたま、買い物に出ていた私を見たらしいんです。その時の私服がかわいいなぁ、って思ってくれていたらしく、その次の日に私が呼び出したのに、すごくびっくりしたって。」
わあ素敵! そして本当にびっくり!(主に僕が!) こういう実績が一つでも出来ると、いろんな人から占いの依頼が続出するのですね。
そして今回の依頼人。芹沢くん。お前かよ。芹沢は小・中・高と同じ学校の友人で、今回ちょっとした僕の占いブームの中にあって、マネジメント的なことをしてくれていた人物だ。芹沢から、ちょっとまた占いの件でなんだが、と言われて、次はどんな人? って聞いたら、俺なんだが駄目か? と言われてしまった。駄目じゃないけど、お前かよ、と思わず突っ込んでしまった。
おおよそ、そういう色恋に疎い奴だと思っていた分、ちょっと驚いた。こちらの用事が済んだら連絡する、珈彩館、という場所に来てくれ、とだけ伝えた。コウサイカン? と聞かれたので、音は合ってる。場所はぐぐってくれ、とだけ伝えた。
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