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ちょっとこれはダメかもわからんね(2/4)
珈彩館。雑居ビルの2階にある喫茶店。カウンターと、テーブルが3つの小さな喫茶店だ。
「よう藤村。ナビ見ながらでも迷ったぜ」
そういう場所にある喫茶店だ。あまり高校生が使うような場所ではないが、一度使い慣れてしまえば、こんなに静かで、自由な場所はない。僕が本を読むときは、いつもここと決めている。
「で、芹沢の占いって何よ」
「俺さ、告白したい女の人がいてな」
「よし、頑張れ」
「いや占えよ。というか内容くらい聞けよ」
占えと言われても、僕の占いがだいたいだってことは、芹沢はよく知っているはずだ。要は、背中を押してもらいたいのだろう。
「芹沢の誕生日って何月何日だっけ」
「2月の14日」
そうかー。バレンタインデーと同じだねーと、言いながら、僕はテーブルに4枚、カードを広げる。
「お前の占いに、誕生日って必要だったっけ?」
「いや全然」
「単に個人情報抜いただけかよ!」
そんな言葉を聞きつつ、広げたカードを左、上、下、右と順々に開いていくと、あれ? って感じになった。いい感じが全くしないのだ。
なんと言って背中を押してやったらいいものか、言葉を選ぼうと思うのだが、芹沢はカードや番号の意味付けを知っている。芹沢の紹介で、何人も占いをしてきている。芹沢は唯一、何度も僕の占いを見てきている人物なのだ。
「……あまりいい感じじゃなさそうだな」
「簡単に説明すると、今まで開いた組み合わせで、最悪な形だな」
「下から引いたカードで、悪い方向に、ハートの13。これをどう説明する?」
「ちょっと待ていま考えてる」
これだけ悪い形、どう強引に解釈しようと考えていたところ、ところで俺が誰に告白しようかとか、そういうの聞かないのか? と芹沢から言ってきた。ごめん手があまりに悪すぎて、それすっかり忘れてた。
「同じ部活の、○○さんて先輩で……」
「まじか僕でも知っている人じゃないか。あのきれいな人だろう」
「やっぱり、ちょっと無理筋なのかな……」
「僕の占いが、そうとう適当なのは知っているよな?」
知っているけど当たるじゃないか、と言いかけるのを押し留めて、どうも○○さんは、片思いの人がいるか、または内緒で付き合っているかしている人がいる、っぽい(知らないけど)。芹沢から見て右がお前で、左がライバルとしよう。で、〇〇さんは、どれくらいの想いでいるのか、ちょっと占ってみようじゃないか。
「どうやるんだよ」
「このハートのエースが〇〇さんとしよう。これを回す」
「回す」
1回目・右方向にカードを指で弾く。カードは回転して、まっすぐ「ライバルの方に頭をむけて」止まる
2回目・左方向に弾いてみる。「まっすぐライバルの方向に頭を向けて」止まる
3回目・「いつもより多く回してみせます」 ばちーんと音が鳴るくらいくるくると回って、テーブルから落ちかけた場所で、「健気にもライバルの方向を向いて」止まる
何だかもう、あからさますぎて、二人とも笑いしか出てこなかった。
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