ただ、あの壇上に登りたいだけだった

7/7
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「わたしが怒らなくても、ふみちゃんは、じゅうぶん罰を受けているし、これからも受けるもの。誰かに『虹のイルカ』を褒められるたびに、心臓が真っ赤な血を噴き上げて、惨めで、死にたいような気持になるんだろうねぇ、かわいそうなふみちゃん。わたしには、そんなの耐えられないや」  聖女みたいにやさしく微笑む詩織が、どんな悪魔よりも恐ろしく見えた。 「それにさぁ、ふみちゃんは知らなかったみたいだけど、あのコンクールって一度受賞したら殿堂入り扱いになってもう出れないんだよ。それなのに、ふみちゃんのおかげで、二度もわたしの創作センスが証明されちゃったね。怒るどころか、むしろ、ありがとう! わたしね、ふみちゃんのおかげで、本格的に小説家を目指す決心がついたよ」  立ち尽くしてすっかり動けなくなった私を前に、詩織は人差し指を唇に当てながら、楽しいことを思いついた子供みたいに笑った。 「記念すべき初投稿作のタイトルは、そうだねぇ……『盗作』にしようかな?」 【完】
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!