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俺は駅前で佳英を待っていた。
甘党の俺のために、今日は少し早いクリスマスのスイーツブッフェに行くらしい。
ついこの間まで暖かかったのに、木々は茶色い枝が目立ち、冷たい風が足元を通り抜ける。落ちた茶色の葉っぱたちはくるくる回りながら追いかけっこを始める。
俺は内心ワクワクしていた。
ただでさえ背が高くて威圧的になってしまう俺に、全く似合わないスイーツ。それが好きになってしまったんだから、運命というのは奇妙なものだ。
「お待たせ、雄嗣」
佳英はベージュのトレンチコートを風になびかせて、小走りでやって来た。
「寒かった」
「ごーめーん。服選ぶのに時間かかったの」
「だから待ち合わせなんて嫌だったんだ。部屋のピンポン鳴らしてくれればいいものを」
俺と佳英は同じマンションに住んでいて、部屋が隣同士なのだ。
「だって、待ち合わせってデートっぽくて良くない?」
そう言って佳英が屈託なく笑うから、俺はふいっと顔をそらせた。
「あ、雄嗣顔真っ赤」
佳英は背伸びして俺の顔を覗こうとする。俺は舐めていたストロベリーミントキャンディをガリガリと噛み砕いて、彼女の手を取り歩き出した。
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