70人が本棚に入れています
本棚に追加
日が傾きかけると、急に寒くなる。夕焼けに照らされた帰り道の公園の自販機で、俺は彼女にホットの某有名カフェ監修のミルクラテを渡した。
「ありがとうございます……これ、美味しいですよね」
「ああ」
それは、俺と佳英の思い出のミルクラテ。それを好きでいてくれてることに、俺はなんとなく照れてしまった。
ふいっと顔を反らせて胸ポケットからキャンディの箱を取り出し、一粒ぽいっと口に放り込む。それをガリガリ噛んでいると、佳英は不思議そうに俺の顔を見上げていた。
「何?」
「その飴……」
「ああ、これは……」
「ストロベリーミント」
「え?」
俺は驚いて足を止めた。
佳英もつられて立ち止まる。
「何となく、そんな気がしたんです」
前を歩いていた颯斗が、突然振り返った。
「これは、運命だったりして?」
「お前は何を言って……」
「だってさ、ストロベリーミントだなんて、普通当てられなくない? これはもう、運命でしょ☆」
いつものようにおちゃらけた颯斗は、俺にニヤニヤと笑いかける。
「あのなぁ……」
「運命……かぁ。なんか、素敵ですね」
「はぁ?」
「佳英ちゃんもそう思うでしょ? もうさ、二人付き合っちゃえば~?」
颯斗はそう言うと、先に歩き出した。俺もつられて歩き出す。
が、佳英は止まったままだった。
「どした?」
「あの……」
佳英はうつむいたまま呟いた。
「私はいいですよ、付き合っても……」
俺と佳英の間に吹いた風は、11月だというのにとても暖かく感じた。
最初のコメントを投稿しよう!