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冬の終わりが近づいて、暖かくなってきたある日。仕事終わりにカフェで待ち合わせをして、今春の新商品を試しに来ていた。
「さくら抹茶アイスラテを、2つ」
「かしこまりました」
初めて彼女と出会った時が蘇る。
ここのレジで彼女は俺を見て笑ったんだ。まさか、俺みたいなヤツが甘いラテを頼むなんて思わなかったって顔で。
懐かしさに頬を緩ませ、さくら抹茶アイスラテを2つ手に彼女の待つ席へと向かった。
「ありがとう!」
「どーいたしまして」
手渡したさくら抹茶ラテを、キラキラした目で見つめる佳英。
「どういうわけか、去年は飲みそびれちゃったんだよね……」
「……そうか」
そうか、佳英には俺と出会ってからの半年間の記憶がないんだ。
その事を思い知らされたけれど、俺はまた彼女と新しい思い出を作っていければいいと思った。
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