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プロローグ
★
思えば後悔は沢山ある。
俺はいつも、少し妥協してしまう。
まあこんなもんでいいだろ、と自分にとても甘い。
小中高と、勉強も部活も、なんだって中途半端だった。今やらなくていいのなら、ギリギリまでやらない。そんな人間だった。
決定的なのは、第一志望の大学に落ちたことか。敗因は、明日やろう明日やろうという、己の軟弱な精神だ。結果一歩及ばず。
でも人生において、たった四年過ごすだけの大学なんて、どこに行っても同じだろうと思った。これも、俺という人間のダメなところだった。
第二志望の大学に入って一年と少したった頃、自分が世間で言うところのゲイだということに気付いた。
いつも適当に参加するサークル主催の合コンで、女よりも男を目で追っていると、友人に指摘されたからだった。
なるほどだから、俺は今まで女子と付き合いたいと思ったことがなかったんだと、妙に納得した。納得して、「じゃあ俺なんてどう?」という、友人の口車に乗せられて、あれよあれよと言う間にホテルまで行った。
でもなにもできなかった。
友人はいい奴だった。今日できなくてもいいよと言ってくれた。初めての俺を気遣って、笑顔で。
その友人は今でもいい友人で、時々ホテルに誘ってくれるけど、俺は未だに童貞処女のままだ。
単純に怖くなって逃げ出した。別に、今じゃなくたって、この先ちゃんと気持ちの通じる相手とする、なんてこともあるだろうし、だからこそ、ただの友人以上にならない相手と初めてをしなくてもいいだろう、と思っていた。
あ、ここは俺の唯一妥協しなかったところかもしれない。ホテルまでついていって何だけど。
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