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第一話 発覚
★
それは成人式の日から起こった。
朝も早く母親に叩き起こされ、「成人式の日くらい自分で起きなさい!!」と怒鳴られ、のそのそと起き上がって自室を出た。
二十歳を過ぎて何ヶ月かたっているけれど、俺は未だに実家に住んでいる。自分に甘い俺は、まだ実家を出るなんてこと考えもしていなかった。
楽だから。自炊しなくていいし、洗濯も掃除も、やってもらえるから。
あと、バイトで稼ぐ金も全部遊びに使えるから。我ながら最低だ。
2階の自室から1階の洗面所へ向かう。築三十年ほどの一軒家には、両親と俺と妹が住んでいる。兄もいるけれど、今は立派に働いて一人暮らしをしている。
俺と違って、と思いはしても卑屈にはならない。だって兄と俺は別の人間だ。優秀な兄とダラシのない俺。だからなんだと思うわけだ。
冷たいフローリングの床は、あっという間に俺の足の感覚を奪っていく。
「寒っ」
そう誰にともなくつぶやいた時だ。
ガクッと足の力が抜けた。一瞬のことで、何が何だかわからないまま、俺は廊下で転んでいた。洗面所は目と鼻の先だった。
「何?どうしたの?」
歯ブラシを咥えたまま、洗面所から妹である愛香が顔を出す。不審気に眉根を寄せている。兄の心配なんてまったくしていないうだ。
「転けた」
「バッカじゃない」
「うるさいよ…」
強かに打ちつけた腰をさすりながら立ち上がった。よかった、別にどこもおかしなところはなさそうだ。ちょっと足の着き方でも悪かったんだろう。
「成人なのに、鈍臭いのは治らないのね」
「うるさいって」
俺は妹の頭を軽く叩き、睨まれながら隣で歯を磨く。世間的に大人と認められるからといって、別に体が進化したりするわけじゃない。従って俺の鈍臭さが治ることなんてない。諦めろ妹。
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