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「律、妹の心配もわかるが、せっかくこうして共に時を過ごすことができるようになったのだ。ほかにする事があるだろう?」
ニヤリと笑んで言えば、律は途端に顔を赤くした。
ころころと表情が変わるのも昔のままだ。人の子は本当に忙しない。
「そ、そう、だよな…俺両想いってことなんだもんな……」
「何を今更。オレはお前を愛しいと思っているぞ」
「っ、あ、えっと、その」
「おいで、律」
その足で、手で。
今まで一方的に握るばかりだった手。
これからは、自由に動かせるその手で、好きなだけ触れて構わないんだ。どこにだって、自分の足で行けるのだ。
見たいものを見よう。行きたいところへ行こう。
そうして共に時を過ごそう。
お前はよく頑張ったから。しばらくは、たくさん褒めてやろうと思う。
律は顔を真っ赤にして、でも花のように笑う。そして地を踏みしめ、こちらへ両腕を伸ばして飛びついてくる。
「俺を選んでくれてありがと。もう離れないからな」
「離れたくても離してやるつもりはない」
選んだのは律の方だ。
オレを選んでくれて。精一杯生きてくれて、ありがとうと言うべきなのはオレの方だ。
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