義足と一緒に

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義足と一緒に

 私の義足は六カ月後に完成した。それは二種類在り、ランニング程度の走りが可能な日常用と100メートルを全力疾走する為の競技用だ。切断した膝下から地面までの寸法関係は全く同じだけど、日常用は大きな油圧シリンダーが電子制御されており、形状もほぼ私の脹脛(ふくらはぎ)のサイズだったから、ズボンを穿けば私が義足を使っている事を他の人は気付かないものだった。また競技用は脹脛(ふくらはぎ)の部分がカーボンファイバーの板バネになっていて、膝部分の加速度センサーで膝の角度やロック位置を決めて私の走りをサポートする機能を持っていた。  義足が完成して私の手元に届いた時には浩輔は『サイバーフット』社に入社していて、私の専属トレーナー兼義足の保全(メンテナンス)技術(エンジニアリング)を担当してくれていた。  私の義足でのリハビリはまず日常用で始まった。最初は足の切断面と義足の支持部が合わなくて、数週間は強い痛みがあったけど、それに慣れるとゆっくり歩くのは直ぐに出来る様になった。でもいきなり止まったり、曲がったりするとバランスを崩して何度も転倒してしまう。その度に浩輔がデーターを見ながら調整をしてくれて、私は約五カ月で日常用の義足を完全に使い熟せる様になった。  この義足で私の生活は劇的に変化した。車椅子の必要は無くなったし、殆どの日常生活に他人のサポートが要らなくなった。そしてなにより歩いたり、ランニングしたりを自分の足で出来る事に大きな幸福を感じていた。
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