エピローグ

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エピローグ

 その瞬間、私は右脚の義足を大きく後方に蹴り出しながら、全力でゴールラインを切った。私はそのままサポーターとしてトラックの上に居る浩輔の所に走り込んで抱き付いた。 「詩織、見てご覧!」  その声に私が後方の大型スクリーンを振り返ると、そこには信じられない記録が踊っていた。 「世界新記録です。東京パラリンピック、女子100メートルT64予選3組。日本の秋月詩織選手が11秒13の片脚義足での世界新記録を叩き出しました!」  そのアナウンスに国立競技場の観客席から激しい歓声が上がった。  私の中に感動の嵐が吹き荒れていた。 「11秒13! 私が事故前に出した健常者の日本記録と同じだわ! 浩輔のお陰よ!」  浩輔も大きく頷いている。 「まだだ、詩織。さっきの走りを見てて、まだ膝の振り出し角度が足らない。あと五度前側に調整するよ。今日は徹夜になっちゃうけど、明日の決勝にはきっと間に合うと思うよ」
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