エピローグ

3/3

55人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「Set! (用意!)」  私は腰を上げると、全神経を耳に振り向けた。 『バン!!』  その瞬間、私は左脚でスタートブロックを力強く蹴って、身体を上方に起こしながら、右脚を大きく横に降り出して前へ蹴り出した。そのまま全神経を両脚に移し、勢いよく左右の脚でトラックを蹴っていく。 (凄い、右脚が本当に私の脚みたい……)  いつもよりスムーズに両脚がトラックを蹴っていく。頬に当たる風から、私は自分の最高速を出せていると感じていた。ゴールラインの先で浩輔が叫んでいるのが見える、そして私は胸を大きく張り出して、ゴールラインを切った。  私の目の前で浩輔が両手を上げて飛び跳ねている。 『再び世界記録が塗り替えられました! 女子100メートルT64片脚義足の決勝、優勝は日本の秋月詩織選手。タイムはなんと10秒48。えっ? ちょっと待って下さい。これは1988年にフローレンスジョイナーが出した健常者の世界記録を抜いています!』  私は歓喜に包まれた国立競技場のトラックの上で再び浩輔に抱き付いていた。 FIN
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加