私の右脚

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 私はそのシーンを思い出していた。トラックは私が乗っていた右側から突っ込んで来て……。 「トラックはタクシーの右側面に衝突して、タクシーを引きずって停止した。僕は左側に乗っていたからかすり傷だったけど、右側の運転席の運転手は脳挫傷で即死だった。君も潰れた車体に右脚を挟まれて……。レスキュー隊がカッターで車体を切断して救助したんだ……」  運転手が亡くなったと聞いて、私の心臓がドクンと鳴った。あの運転手の男性が……。でも……。 「でも良かった。浩輔も私も無事で……。神様に感謝しなくっちゃ……。ねぇ? 私の怪我は? どのくらいで退院出来るの?」  浩輔の表情が一瞬で大きく曇る 「詩織。君の怪我は右脚を除いてかすり傷だ……」  私は浩輔の両眼に涙が浮かんでいるのに気付いた。 「えっ? 右脚……。どんな怪我なの……? 骨折とか?」  そう言いながら、私は初めて右脚の感覚が無い事に気付いていた。 「詩織、落ち着いて聞くんだ。君の右脚は車体に挟まれて完全に潰れていた。残念ながら修復は不可能で、膝下を切断するしかなかったんだ……」  私はその浩輔の言葉を呆然と聞いていた。私がゆっくり足元を見ると、シーツの下にある筈の右脚の膨らみが見えない……。身体を起こして膝下を触ってみる。そこにはある筈の私の右脚はもう存在していなかった。
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