神様、お願い……

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「詩織! 何やってるんだ!!」  その声に私が振り返ると、浩輔がこちらに走って来るのが見える。その瞬間、首を振ったことでバランスを崩した私はフェンスの外の屋上に転がった。この時、落下しなかったのは今思えば不幸中の幸いだった。 「詩織! 大丈夫か?」  顔を上げると浩輔がフェンスをよじ登っている。そしてフェンスの外に飛び降りると、身体を起こした私を抱きしめた。 「詩織! 君の人生はまだ終わっていない! 僕の為にも、そしてお父さんとお母さんの為にも生きてくれ! お願いだ!」  私はその浩輔の言葉にハッとしていた。突然、飛び降りようとしていたことが恐ろしくなって震えが襲ってきた。そして私は浩輔の胸に顔を埋めると大声を上げて泣いていた。 (神様、お願い。私をまだ生かして下さい……。まだ私が必要だと言う人が居てくれるなら……)  私はそう思いながら彼の胸で泣き続けた。
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