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「桜子? 入るよ。……ほら、ココア持ってきたから」
フローリングに置いたクッションに座って、ベッドに伏せていた顔を上げると、お兄ちゃんがドアを開けてカップを2つ持って部屋に入ってくるところだった。
私は涙でひどい顔をしてるに違いない。でもお兄ちゃんは何も言わなかった。
「……ありがと」
私はテーブルの方に体の向きを変えて、お兄ちゃんからカップを受け取った。ミルクココアの甘い香りが鼻に広がる。
両手で持って一口飲む。甘くて、おいしい。
温かくなった心から、また悲しい気持ちがまた溢れてきて涙が流れた。
「……」
お兄ちゃんは私が話し出すのを、自分に淹れたコーヒーを飲みながら静かに待っていてくれた。
私はカップをテーブルに置いて、カップに両手を添えたまま話し出した。
「……あのね。智明くんに私が浮気してるんじゃないか……って、疑われて……」
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