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「え……あの、その……私は……」
「知ってるわよ! 彼女が欲しくてここに来たんでしょ?!」
あの恥ずかしい間違いを聴かれてた。
それを思い出して顔を真っ赤にして下を向く私。
そんな私に対して巫女服の女性は笑顔で私を抱きしめながら言った。
「だってここ、百合神社だもの!」
「……百合? ……百雲……じゃ、なくて?」
「百雲? ああ、それはここから丁度反対側にある神社ね、あそこも参拝客が来ないだの、収入がないだの騒いでいたわね」
私を抱きしめている女性の言葉に動揺する。
間違えた。
間違えた。
間違えた。
そんな私の混乱と動揺を無視するように女性は抱きしめたまま話を進める。
「最近の女の子の格好はそんな感じなのねぇ……ふむふむ……ちょっと待ってね、直ぐにあなたに相応しい姿になるから……っと!」
私から少し離れた女性はそう言いながら目の前で一回転した。
すると巫女服から最近有名なモデルさんが着るような服に身を包んでいた。
「へ!? ぇ……あ、あなたは一体……」
突然の出来事。
私は目の前のそれを見てそう言う以外の言葉すら思い浮かばないほど混乱していた。
そんな私に対し両手を腰に当てた女性は微笑みながら少し八重歯を出して言った。
「私の名前は百合桜、ここ百合神社の神様よ!」
「か、かみ……あ、あはは……そ、そうなんですか……」
自分のことを神様だと名乗る人に対し苦笑を浮かべながら逃げようと考え歩き始めた瞬間、私は腕を取られまた抱きしめられてしまった。
「逃がさないっ!」
「や、やめてください」
「えー、だってあなた、彼女が欲しくて神様にお願いしたんでしょ?」
「あ、あれは間違って本当は……彼氏が欲しくてぇ」
振り払おうと振り払えず、私は体を左右に動かすしかなかった。
しかも間違いだったことを言っても百合桜と名乗った女性は笑顔のまま私に言った。
「間違い……間違いかぁ、でも残念、その願い事、私が叶えちゃったから!」
「ど、どういう……」
「あなたが言った間違いでも彼女が欲しい、それを百合神社の百合桜こと、私、神様はあなたの彼女になることで叶えちゃいました!」
「はぁ?!」
笑顔で言われたその言葉に私は驚きの言葉と共に脱力した。
その直後、目の前の女性が私を心配そうに抱きしめてどこかに運んでいる姿と共に私は気を失った。
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