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夢だった。
自分を神様だって言う女の人と会って彼女にさせられる。
そんな夢物語なんてあるわけない、きっとそう。
「おはよう、大丈夫?」
夢じゃなかった。
目を覚ますと目の前には笑顔を浮かべながら私を見下ろす女の人。
そして明らかに頭の下には膝だとわかる感触がする物があった。
「うん、大丈夫そうね、でも、まさか嬉しくて気を失っちゃうなんて思わなかった」
私もそう思う。
というか、なんで嬉しくて……気を失う? そうじゃない。
嬉しくなくて気を失った。
しかも自分を神様だとか言う人を……。
「その顔……もしかして私を神様だと思ってないでしょ?!」
「……お、思ってます、よ? じ、自称? 神様? でしたっけ?」
でも面と向かって言えるほど私は出来た子じゃない。
だから遠回しに否定するように言って……あげた。
すると私の言った意味を理解してしまったのか女の人はほっぺを膨らませると私を起き上がらせ手を握ると同時に神社の階段を駆け下りて行く。
「ど、どこにーーー?!」
「信用してないみたいだから教えてあげる! 私が神様だってこと!」
「どこーーーでぇぇぇ?!」
幅がそこまで広くない石の階段を駆け下りるが如く降りて行く。
普通であれば足を踏み外したり、コケて大惨事になるはずなのに……足はしっかりと階段を踏み抜き一つずつしっかりと降りながら駆け下りていた。
そして階段を降りると同時に反対側に向けて最短距離でまた走る。
「む、無理……むりぃ! わ、私……体力……!」
「いけるいける!」
まるで風を切るように目の前を走る女性に手を引かれるがまま私が神社の階段を駆け下り、今はどこに向かって走っている。
本来ならとっくに息を切らし地面に両手を付けて倒れている。
そのはずなのに足は軽快でまだまだ走れる、そう言っている感じだった。
それに身を任せに任せた結果。
反対側とまで言われた百雲神社の鳥居前に付いてしまった。
「とうちゃーく!」
だが言葉と同時に足を止めず、神社の階段を駆け上がり……ついに本殿前に辿り着いてしまった。
「ここも寂しいわねぇ……っと、いたいた! やっほー!」
まるで友達に話しかけるように話しかけた人物は……神社の屋根の上に座りつまらないな顔で下を向き、女性の顔を見ると物凄く嫌な顔をした男性だった。
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