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「お前……よくここに顔を出せたな」
「固いこと言わないでよ、私とあんたの仲じゃない」
桜と名乗った神様と屋根から飛び降り軽々と地面に足を下ろした男性。
しかし男性の表情は嫌な相手を見るようなままだった。
「お前がここを俺に押し付けたんだろうが?!」
「いやぁ、私はさぁ……縁結びよりもほら? 同性の方が好きだから」
「……ついに頭まで逝かれたか」
「あの……その人は……」
割り込むように言った私の言葉に二人は振り向きこちらを見る。
桜は笑顔で私に駆け寄るが、男性は驚いた顔を一瞬したが両腕を組み睨みながら言う。
「で、人間ごときがなんで俺が見える?」
「そりゃあ、私の彼女だもん」
「人間の小娘に神が……本当に……貴様は……! もうしらん!」
そう言うと背を向け、また屋根の上に……飛び乗ってしまった。
それを見上げている私に対し嬉しそうな顔をした桜が話しかけてきた。
「あいつは元々、百合神社の神様だったのよ」
私が行くはずだった縁結びの神社こと百雲神社。
あそこの本来? の神様は私の目の前にいる神様? こと百合桜。
だけど、縁結びを嫌い投げだし、何もない百合神社の神と入れ替わった。
そしてその百合神社の神様があの男性だった。
「でも……それが本当だとして、どうしてそんなことを?」
「さっきもあいつに言ったけど私は同性、女の子が好きなのよ、だからこの神社に来る男女が好きになれなくてねぇ……それで良く別れさせたりしたなぁ……」
遠く見るような眼で空を見上げている桜に私は一瞬だけ同情するような視線を送ったが直ぐに正気に戻り、言った。
「って! 縁結びの神様が破断させてどうするのよ! それにそれ嫉妬かなんかじゃないの!?」
「いやぁ……嫉妬とかじゃなくて、私はさ……元々、恋愛ごとに興味なかったのよ、他の暇な神様達と違ってね、でも……そうね、あなた……遠野美夏を見て気が変わったのよ」
「見てって……あったの今さっきでしょ?!」
「そんなことないわよ? 私はあなたを前から知っている」
そう言いながら桜は私の事をまるでずっと見てきたかのように喋りだした。
男女関係に興味持たず、特にこれと言った特技を持たない私。
それに自分を重ねていた……らしい。
だが、私が恋愛に少し興味を持ちだしたことで、桜自身も同じように興味を持ち、考え付いたのが自分の元に私を呼ぶこと。
しかし何度も見て行く内に私が更に気になった結果……こんなことになったらしい。
と……いうことは。
「元凶って……私?」
「あら、話が早い! そそ、そんな感じっ」
桜は嬉しそうに私に抱き着いた。
それに驚き固まったままの私が空を見上げると視線の先に先ほどの男性が眼に写る。
すると男性は呆れと見下しのような視線をすると同時に大きく溜息を付くと手を払う動作をして神社の後ろに姿を消してしまった。
「これで……邪魔者はいなくなったわね……さぁ、私といちゃいちゃしましょ?」
「無理!
私は桜を払い抜け、階段を全速力で走り下りて逃げ出した。
「追わなくていいのか? あの人間がお前の追いかけている伴侶なんだろ?」
「応援してくれるの?」
「馬鹿かお前は、俺はうるさいお前がいなく方が静かでいいし、それに……お前が楽しそうなのは久しぶりに見るからな」
それだけ言うと男性はまたどこかに姿を消した。
それを微笑みながら見送った桜は階段を勢い良く駆け下りながら独り言を言った。
「そうね、そうよね……楽しまないと、今をそして美夏との出会いを!」
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