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元々、この2LDKの部屋は彼氏と同棲する為に借りた部屋だ。
彼氏との二人の収入があればともかく、春奈一人でこの部屋の家賃を支払っていくのは金銭的に苦しい。
つまり、春奈は彼氏と同じく引っ越しを行わなくてはいけない状況に陥ったのだ。
「さて、ドコに引っ越そうかな……」
思った春奈は、舌打ちを繰り返しながら、早速スマートフォンで賃貸物件を検索し始めた。
が、30分近くスマートフォンで賃貸物件を検索して、めぼしい物件が見つからなかった春奈は、ゴロリとフローリングの上に横臥した。
そして、彼氏に対する怒りと、仕事で心身共に疲れきってしまったのか、春奈はいつの間にかそのまま寝入ってしまった。
午前4時、身体の節々が痛くなり目を覚ますと、春奈は寝室のクローゼットに入れていた予備の毛布を取り出し、それに身を包んで再び眠りについた。
「なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだよ……」
メイクも落とさず、フローリングで冷えきった身体を毛布の中で温めながら、春奈は一筋の涙をこぼす。
本来、「落とし物」というモノは、それなりの価値があると見なされれば、誰かの手によって拾われる。
しかし、彼氏(だった男)以外に男性の影が見受けられない今の春奈の立ち位置は、路傍の石と言っても差し支えなかった。
くしゃみの一つが、がらんとした部屋内で大きく響き渡る。
その虚しさに惨めな想いを抱いた春奈は、再び涙をこぼした。
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