10.羽住一斗という男

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 いま、修太郎(しゅうたろう)日織(ひおり)の横を歩いていたならば、彼女がキョロキョロして小さな発見をしては歓声を上げるたび、穏やかな笑みを浮かべて相槌(あいずち)を打ってくれていたことだろう。  ふと自分の横に修太郎がいないことを寂しく思ってしまった日織だ。 (修太郎さん。ご一緒出来ないのは凄く寂しいですっ。でも……私、修太郎さんと一緒に暮らせるようになる前に……もっともっと人並みに色々なことがこなせる一人前の女性に成長しておきたいのですっ)  ――バイトをして、自分で稼いだお金でお買い物をしてみたい。  それが、今まで父親と母親と、修太郎に守られてきた日織が「いの一番」に考えたこと。  いつもしてもらってばかりの自分が、誰かに何かをして差し上げることができたなら、どんなに幸せだろう。 (だから私、頑張るのですっ)  皇帝ダリア越しの、青く澄んだ空を見上げて、日織は心の中で小さく「エイエイオー!」と自分を鼓舞(こぶ)した。
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